神殿で行われている全ての祭祀について記録した手稿。
ポイベーは敬虔に箱を祭司に渡し、慎重に地面を見つめた。今回の儀式はすでに心の中で何百回も練習した。あとは用意した質問を聞くだけだ。
「メェ?!」ヤギは体の水を振り払い、祭司は満足そうに頷き、箱を開けた。中にあるのは小さな銅貨数枚と、櫛や髪飾りだった。この貧しい少女が出せる最高の贈り物だった。予言者は階段を下り、箱を閉じた。「若者よ、どこから来たのだ?」
預言者は若く見えたが、人生経験に満ちたような声をしていた。彼女はすでに百年以上生きていて、神から永遠の青春を賜ったのだと言う人もいる。「わ…私は地元の人で、デルポイに住んでいます」とポイベーは答えた。
「話を聞こう……」予言者はいつの間にか高座に戻っていた。
「私の兄は…」ポイベーは思わず前へ進み出た。「兄は戦場で死んだと皆言っていますが、私はそう
は思いません。兄はきっと生きています。彼がどこにいるのか知りたい。」
予言者はピンクの花びらを口に入れ、ゆっくりと目を閉じた。呼吸音が静かな神殿の中に無限に拡張され、青紫色の煙が彼女の足元から昇り、彼女を包み込んだ。
「あ……」
預言者は突然高座から転落し、全身を震わせた。祭司たちが前に出てポイベーと彼女を隔てた。
「祭司さま、大丈夫ですか?」ポイベーは尋ねた。
やがて意識を取り戻した預言者は、涙を流してポイベーに告げた。
「コールズの妻、ガイアの娘よ、あなたが待っている光はとっくに離れた。月桂の下で、あなたは新たな希望を見つけるでしょう……」
ポイベーは言葉もなく、両手で顔を覆って泣いていた…
Keywords | Translated keywords |
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デルポイ | アテネ付近 |
ピンクの花びら | 夾竹桃 |
青紫の煙 | 地下の毒煙 |
月桂 | アポロンの木 |