愛と自由を求めた偉大な戦士について書かれている。
クエントゥスという驚愕的な戦士は再び立ち上がった。この五賢帝以来最も偉大な戦士は短剣を振って、血を地面に落とした。地に横たわる雄ライオンの腹部はまだ起伏しているが、もはや吠えられず、首筋の傷も呼吸に合わせて広がっていった。
観衆は喝采を送り、親指を立てた。奴隷商人は慌て出した。彼は次の戦いで一人でこの剣闘士に立ち向かうと約束したからだ。これまでの金の賭けは全て罠で、彼を観客席から誘い出すためだった。
奴隷商人は禁衛軍から頭を出し、クエントゥスの妻を解放して家に帰らせると言った。
戦士は返事をせず、ただ袖を引き裂き、手に剣を縛りつけた。
クエントゥスはゆっくりと地面に座り、静かに待った。観客の喝采は叱責に変わり、次の戦いを促した。
すでに日没時で、闘技場の内外には松明が点っていたが、クエントゥスはまだ地面に座っていた。奴隷商人はやっと鎧に着替えて登場した。彼は遠慮がちに宝剣を掲げ、栄誉や命なについての賛歌を口
にしていた。クエントゥスは座ったままだった。
奴隷商人は恐れていた。自分と剣闘士との差は明らかで、しかも相手は自分のことなど眼中にない。自分がうかつに前に出ると、あのライオンのように地面に倒れるだけだろう。彼は逃げる口実を探そうとした。短時間でも
奴隷商人は足が震え、剣を地面に落とし、負けを認めた。彼は怖気で剣を持てず、戦えなかった。観客はクエントゥスに相手を殺せと促したが、彼は地面に座ったままだった。
不審に思った兵士たちが近づくと、クエントゥスの背中がすでに血で赤く染まっていることに気づいた。ライオンに攻撃された所だ。彼はもう限界に達していた。
クエントゥスは、とっくに死んでいたのだ……
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五賢帝 | ネルウァ=アントニヌス朝 |
禁衛軍 | 皇帝直属部隊 |
剣闘士 | 殺し合う戦士 |